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2008.05.09 (Fri)

奇跡の槍

「あなた、サンタクロース?」
「いいえ。サンタは忙しくて来られないの」
「それならあなたは誰なの?」
「ヨンタクロースよ」
 タイトルも前後の展開も総て忘れてしまったのだが、そんな映画のシーンを観たことがある。ような気がしている。その後しばらく、「ヨンタクロース」って本当は英語でなんと言っていたのだろう、というのが疑問だったのに、終に分からないままになってしまった。
 洋画は好きだが、英語はとても苦手。そういう意味では、私は作品を十分に楽しんでいないのだろうなぁと思っている。外国語が流暢に喋れたら私の世界はもっと豊かになるだろうに。
 年単位で昔の話になるが、『黒十字の騎士』という小説を読んだ。作者はジェイムズ・パタースン(
James Patterson)とアンドリュー・グロス(Andrew Gross)。邦題は「黒十字の騎士」だが、原題は「The Jester(道化師)」。騎士と道化師は敵対関係で、しかもこの場合主人公は道化師。騎士は蛮行を繰り返し、主人公の妻子を虐殺した憎い男だ。それでも邦題が『黒十字の騎士』なのは、間違いなくその方が様になっているからだと思う。(なにしろ、「黒十字」といえば「ドイツ騎士団」だから!)。翻訳家の苦労をつくづく感じてしまう。
 小説の時代は中世フランス。イスラム教勢力がヨーロッパを蹂躙し、やがて東ローマ(ビザンツ)帝国を滅亡へと追いやる時代。キリスト教世界を守るため、民衆も王侯貴族も揃って東を目指した時代だ。いわゆる十字軍の時代である。
 主人公のユーグは南フランスの小さな村で宿屋を営んでいたが、自由が手に入ると聞いて十字軍へ参加する。しかし、それでは自分の望む自由は手に入らないと悟り、脱走兵となって愛する妻の待つ故郷へ戻る。が、そこに妻はいなかった。
 十字軍遠征から自身の持ち帰った何かのために妻子を奪われたと知ると、ユーグは復讐の鬼となって独り立ち上がる。やがて妻子を犠牲にした物の正体が聖遺物(ロンギヌスの槍)だったということが発覚すると、イエスの血の付いた槍を所有するユーグのもとには、領主に抑圧され続けてきた民衆が集まり、自由を求めた反乱が起こる。

 総じて、面白い作品だった。読者を飽きさせないストーリー展開は、まるで映画を観ているかのようで、一気に読み干してしまった。
 しかし、読者サービスが過ぎているというべきなのか、ちょっとやりすぎな感もある。

 史実として、フランスでは十字軍遠征や百年戦争と動乱が続く。農民は戦争に重税に疲弊した。百年戦争のさなかには、ジャックリーの乱と呼ばれる農民反乱が起こっており、時代背景としては何ら間違ってはいないものの、そこはやはりフィクション。なんと勝ってしまう。しかもフランス国王の愛娘とめでたく再婚するというおまけ付きだ。それも、農民の暮らしに大変理解のある社会主義派の王女様というのだからマルクスもびっくりである。
 しかも、描写があまりにも粗野で動物的だ。暴力的なシーンは徹底して残酷だし、書くと指定サイトにされてしまうようなシーンは、艶かしさとは縁遠く、野蛮な気配さえ漂わせている。しかも描写の頻度が多い割には、特に感じるところなく平静で読めてしまうのだから、とんでもないことである。
 挙句にこの主人公、道化師の格好で戦う。良くも悪くも所詮はフィクションである。
 とはいえ、ロンギヌスの槍というのはひとつのアイロニーだろうと思った。ジャックリーの手にはロンギヌスの槍はなかったが、ユーグの手には聖なる槍が握られていた。この聖遺物がなければ、フランス革命を待たずして民衆の勝利はあり得なかったはずだ。まだまだ「奇跡」を必要とした時代の話なのである。

テーマ : 読書感想文 - ジャンル : 小説・文学

EDIT  |  19:09  |  TB(0)  |  CM(5)  |  Top↑

Comment

タムさんの文章の書き方が、いいですね。
ポイントを押させて書いていらっしゃるので、
歴史に弱い私でも、興味深く読ませていただきました。
同時に、勉強しないとなぁとも思いました。
歴史を知っているからこそ、こういう小説も面白いのですものね。
ひよこママ |  2008.05.10(Sat) 19:08 |  URL |  【コメント編集】

今日も

相変わらずチョット(?)外れたコメントを。

タムさんの文章読んで思い出したのは“パラレルワールド”とか、父から聞いた無声映画時代の話。
無声映画時代は、映画の大まかなストーリーはあるけれど、セリフが決まってはいなくて、映画の画面の前に弁士(または活弁と呼ばれる方)が一人座っており、観客客層をチェックしながら、そのおおよそのストーリーに合わせてセリフを変えてしまったりして話していたんだって。
そうそう!そういえば「星の王子さま」もタイトル色々もめたよね~(笑)
翻訳者や弁士のセンスで変わりえるのも楽しいものでしょうね。
今はみんな押し並べておんなじだけれども。
時代背景ばかりでなく、服装とか思想形態が不明だと、読書の理解と楽しみはやはり薄くなるよね。
私ももっと勉強しとけば良かったけど、興味無いと未だに入り込めないんだな~。
でも知的なタムさんには憧れるなぁ。
知恵は宝だよね。
尊敬!
(∂∇∂) |  2008.05.11(Sun) 21:07 |  URL |  【コメント編集】

聖遺物

 中世暗黒時代の頃についての本は、何故かあまり読んだことがありません。暗い雰囲気があるからかな。
 イエスの遺物を集める=信仰心がある、では無い気がします。

 聖遺物をめぐる争奪戦では、インディジョーンズやダビンチ・コードが聖杯を追い求める場面を思い出します。
 イエスという一人の人間が、どうして、これだけ後世に影響を及ぼすことになったのかについて、大変興味があります。 
 機会があれば一度読んで見たいと思います(^^)
 
myth |  2008.05.12(Mon) 19:55 |  URL |  【コメント編集】

コメントありがとうございます、とある事情によりブロガー名を『ち』から『ふじこ』に変更させていただきました、これからも宜しくお願いいたします!

あまり映画は見ない方なのですが、どちらかといえば邦画より洋画の方をよく観ます~、しかし私も英語は全然駄目ですw中高生の頃英語の勉強も好きな方だったのですが…やはり早くから英語にふれていたらな、と…ペラペラっと話してみたいものです、洋画や洋楽もより一層…楽しんでみたいものです


タムさんの文章を読ませていただいて黒十字の騎士、是非とも読んでみたいと思いました、歴史にも興味があります(*・ω・*)
ふじこ |  2008.05.12(Mon) 23:33 |  URL |  【コメント編集】

四択?

ヨンタクロースって、初めてききました。
ちょこっと調べたら、悪い子のところにくるひとなんですね。
あと、本当か嘘か、「ゴンタクロース」っていうひともいるらしいです(笑)。

ロクタクロース、ナナタクロース・・・っているわけないか。
ひろせ |  2008.05.13(Tue) 01:21 |  URL |  【コメント編集】

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