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2008.04.29 (Tue)

坊っちゃん

 私の場合、「坊っちゃん」という単語で真っ先に思いつくのは、夏目漱石ではなくて内田康夫。浅見光彦が活躍する旅情サスペンス、『坊っちゃん殺人事件』の方だ。30過ぎの自分を家政婦の須美子が「坊ちゃま」と呼ぶので大変辟易している、という冒頭から紐解かれるこの作品は、漱石の『坊っちゃん』と同じ愛媛で展開され、また漱石の用いた愛称が至るところで使われている。
 本家本元の夏目漱石はと言えば、まだまだ『吾輩は猫である』の余韻覚めやらぬ(てい)の文体。だが、『猫』に続く作品の割に猫より古めかしくて、似たような雰囲気の作品を残した文学者として真っ先に思い浮かぶのは十返舎一九。それでは古すぎるので、せいぜいが二葉亭四迷だろうか。江戸後期から明治初期の江戸大衆文化をそのまま引き継いだような雰囲気を漂わせている。この作品には「勧善懲悪」という評価がついて回っていたような気がするが、悪を懲らしめた「坊っちゃん」と「山嵐」は名声を得るどころか職を失ってしまうし、滑稽と言うよりは世の無常を痛感する作品だ。私にとってはね。江戸の空気をまといつつも、そこはやはり明治のご時世でありんす。大衆受けを最大限狙った上で、それでも書かずにいられなかったアイロニーが込められている。それでも、この時期の漱石が被っていたユーモラス、私は好きだ。
 作中に「うらなり」という人物が登場する。美人の婚約者がいたのだが、上司に横取りされた挙句に転勤させられてしまう哀れな人物。
 強いものには逆らえないが、かといって強いものにゴマをすって取り入ることもできず、非常な仕打ちに粛々と従う。サラリーマンの哀愁を感じさせるこの「うらなり」さん。どこかに確実に存在していそうなタイプだけど、まさにその人、と思うような人に私はまだ出会ったことがない。人間、多かれ少なかれ狡賢く生きているものだと思う。それでも「うらなり」がどこかに存在していそうに思えるのは、人は多かれ少なかれ自分を「うらなり」だと思い慰めているからかもしれない。
 どうにもならないことの多い世の中ですからね。

テーマ : 読書感想文 - ジャンル : 小説・文学

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Comment

昼休みです♪

相変わらず哲学的タムさんモード楽しい文♪
…信じられないと思うけど、私は超有名な漱石の“坊っちゃん”さえ読んでナイ★&勿論内田さんのも読んでナイ(自慢にもならない)。
だから“うらなり”さんのコトも読んだ上では無いけれど、こういう人実際もいるんでしょうけど、現実には確かにあまり聞いたりも見掛けたりもしないよね。
ドラマや小説には出てくるけど…。
…そういう架空のユニーク(?)なキャラと出会うコトはあるのかな?
ふと周りを見ると当たり前な“普通”ばかり。
だから小説でトリップも楽しいんだろうね(笑)
ではでわ(今日はとてもいいお天気~)
(∂∇∂) |  2008.04.30(Wed) 13:00 |  URL |  【コメント編集】

いやぁ、タムサマの書く文章は本当に毎回スゴぃですっ!!
勉強になりますー(^▽^)
夏目漱石の作品は、学校の教科書にいくつか出てきた気がしますー
でも、今思い返すと全く内容を覚えてなくって、
自分が情けなくなりましたorz(笑)
まりまり |  2008.05.01(Thu) 02:08 |  URL |  【コメント編集】

窮鼠猫を噛む

 夏目漱石の作品で読んだ記憶があるのは、「我輩は猫である」と「坊っちゃん」ぐらいですね。それも遥か昔に・・・
 私だったら、赤シャツにマドンナを奪われる前に、ぶん殴って教師を止めてしまうと思います(^^)
 どうにもならないことの多い世の中ですが、上司にゴマをすったり、諂ったりしたくはありません。でも、上司以上の経営者が決めたことには逆らえませんが。
 「うらなりさん」だって限度を超えれば、窮鼠猫を噛むになるかもしれませんよ。
myth |  2008.05.01(Thu) 19:59 |  URL |  【コメント編集】

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